「熊出没注意」
2023年の秋から冬にかけて
全国的に熊の出没情報が駆け巡っています。
北海道では「OSO18」という体長2m以上の
ヒグマが、牛を60頭以上を襲ったニュースも
話題になりました。
全国各地で目撃される熊。
熊の捕獲方法を巡っては、動物保護の観点から
難しい問題にも直面しました。
「命懸けで市民の安全を守る」
各都道府県の関係者の方々や猟友会の方々には
深く感謝しなければなりません。
ところで…
あなたは静岡県の伊豆をご存知ですか?
今回の記事は
「伊豆と熊」のお話です。
この伊豆地域にも、およそ100年前まで
熊(ツキノワグマ)が生息していました。
「伊豆地域の熊は絶滅した」
それが常識だったのです。
2年前の「あるニュース」が報じられるまでは…
・伊豆の熊は本当に絶滅したのか。
・富士山周辺から移動して来たのか。
実際に報じられたニュースや地図を使用して
伊豆地域の熊について考えてみます。
「伊豆の熊の絶滅」根拠とは
伊豆地域では、約100年前まで
「ツキノワグマ」が生息していました。
現在では絶滅したといわれています。
絶滅の根拠
それは、静岡県情報「レッドデータブック」
皆さんは、この「レッドデータブック」を
ご存知ですか?
静岡県「レッドデータブック」
※下記のリンクからご覧になれます。
<まもりたい静岡県の野生生物2019>
静岡県レッドデータブック<動物編>
哺乳類30Pにツキノワグマの記載があります。
レッドデータブック「ツキノワグマ」
伊豆地域で約100年間「ツキノワグマ」の
生息が確認されていません。
県内では、県中・西部と富士地域に分布し、伊豆地域では絶滅した。
引用:静岡県レッドデータブック 哺乳類30P「ツキノワグマ」
このように、「伊豆地域の熊の絶滅」は
決定的な事実になったのです。
「伊豆の熊」絶滅からの目覚め?
約100年前まで伊豆地域で生息していた
「ツキノワグマ」
伊豆の深くて険しい山々を見る度に
本当に居ないのだろうか…
と思ってしまいます。
「伊豆地域の熊は絶滅した」
レッドデータブックにも記載されていた
約100年間の事実が、2021年に覆りました。
100年の沈黙を破った2021年の熊捕獲
2021年7月
西伊豆町で体長135センチ、体重43キロの
オスのツキノワグマが捕獲されました。
そして2年後の2023年の捕獲情報
2023年10月
河津町(東伊豆)で体長120センチ、2歳ほどの
オスのツキノワグマが捕獲されました。
2年の間に伊豆地域の東西で発見された
「ツキノワグマ」
この事実が…
伊豆地域の熊の絶滅を覆したのです。
さらに目撃情報が相次ぐ
同年10月に「沼津市内浦三津」でも
熊らしき動物の目撃情報がありました。
「伊豆の熊」は絶滅していない?
伊豆地域の熊は、本当に絶滅したのか。
約100年ぶりに捕獲されたツキノワグマは
数少ない「生き残り」なのでしょうか。
ツキノワグマが発見された地域
何頭生息しているのか?
ツキノワグマは、野生で最大30年ほどの
寿命であるといわれています。
熊は、一般的に単独行動が多い動物です。
排他的な縄張り意識もありません。
したがって行動範囲が他の個体と
重複することもあります。
2年間で2頭以上、捕獲・目撃されている事から
伊豆地域で繁殖した可能性も否定できません。
母熊が小熊と行動を共にするのは有名です。
はたして捕獲された2匹の熊の母熊は、絶滅を
免れたツキノワグマの子孫なのでしょうか。
約100年間出没していなかったことが
謎を呼びますよね。
ちょっとワクワクしてしまいます。
ところで…
静岡県では、現在も富士山周辺に
「ツキノワグマ」が生息しています。
あなたは、富士山周辺の山と伊豆地域の山が
繋がることをイメージできますか?
この地理的条件こそが…
「ツキノワグマ移動説」に繋がるのです。
「伊豆の熊」は移動してきた?
「伊豆地域の熊は絶滅していなかった」
その衝撃は新たな謎を生みました。
実は、生き残り以外にも可能性はあるのです。
それは…
「富士山周辺からの移動説」
富士山周辺の地域では、現在も
ツキノワグマが生息しています。
更に箱根の山を挟んだ、お隣の神奈川県の
丹沢山地でもツキノワグマは生息しています。
減少するエサやメスの熊を求めて
大きく生息地域を拡大したのでしょうか。
富士山麓からの移動説
2021年に伊豆地域で捕獲された
約100年ぶりのツキノワグマ。
日本ツキノワグマ研究所 米田一彦さんの
コメントが衝撃的でした。
ツキノワグマの生態に詳しい米田一彦さんは「富士山周辺から移動してきた可能性もある」と説明します。
引用:Yahooニュース【なぜ】約100年前に“絶滅” のはずが…伊豆半島にクマ 専門家「富士山周辺から移動か」(静岡県)
富士山周辺の山から伊豆地域に移動することは
地理的には可能です。
富士山から伊豆へと山が繋がっていることを
イメージしにくい方もいますよね。
地理に詳しくない方のためにも
次の項目では、地図を使って説明します。
【考察】富士山周辺から伊豆へのルート
基本的に富士山周辺や神奈川方面から
伊豆に向かうためには…
山梨県の三国山や静岡県駿東郡小山町、
神奈川県の南足柄市を経由して…
箱根に入るルートが有力であると考えます。
ツキノワグマ出没情報を基に、市街地を渡らない
前提で考察しています
その他の伊豆方向に直接進むルートには
市街地や国道があるのです。
裾野市や御殿場から箱根側の山に渡る場合も
同様です。
もちろん後述する「アーバンベア」のように
市街地を抜ける個体も存在すると思います。
今回は、あくまで市街地や国道を
渡らずに移動することを前提に
考察しました。
あくまでも考察ですので参考までに
読んでくださいね。
ツキノワグマ生息地域 | 可能性のあるルート | 備考 |
---|---|---|
富士山 | 小山・足柄→箱根→伊豆 | 生息地域に樹海も含まれる |
天子ヶ岳〜毛無山 | 富士山南部、北部を迂回して小山・足柄ルート | 富士山西部 |
三国山〜不老山 | 小山・足柄→箱根→伊豆 | 富士山東部 |
愛鷹山 | ・富士山南部から北上して小山・足柄ルート ・国道や市街地を渡る必要がある為、伊豆への直結ルートは可能性が低い | ・富士山南部に位置 ・2006年を最後に生息情報なし ・裾野市でも出没情報有り |
丹沢山地 | 丹沢山地→足柄→箱根→伊豆 | ・丹沢山地はツキノワグマ生息地 ・箱根町でも出没情報有り |
熊と遭遇する可能性
冬眠明けに体重が大きく減少する熊。
冬眠前の熊にとって栄養を蓄える冬支度は
重要なのです。
その為、秋から冬にかけては、もっとも
熊との遭遇に注意が必要な時期といえます。
冬眠をしない熊も目撃されることもあるので
十分注意が必要です。
伊豆地域の山に入る際も細心の注意を
お願いします。
市街地に出没する「アーバンベア」にも
意識を向けましょう。
都市型の熊「アーバンベア」
絶滅を免れていたにせよ…
富士山周辺の山から移動してきたにせよ…
市街地などに近い森林で、繁殖して個体数を
増やすケースも考えられます。
人里近くで育ち、街中にも出没する熊のことを「アーバンベア」といいます。
今年は、熊が好むブナのみやどんぐりが
全国的に凶作とも言われています。
エサを求めて人里に降りてくるアーバンベアに
遭遇することも十分に考えられます。
次の項目では静岡県公式の熊出没情報を
紹介しています。
お近くにお住まいの方や該当地域を訪れる方は
細心の注意をお願います。
【静岡県公式】ツキノワグマ出没マップ
もしも熊と遭遇した場合
もしも、山中や街中で熊に遭遇したら…
足がすくんでしまいそうですよね。
まさか、寝たふりをするわけにもいきません。
…かといって戦うなんて無茶もできません。
もしも、熊と遭遇したら…
あなたはどのような方法を取りますか?
一番大切なことは、遭遇する可能性を念頭に
適切な準備をすることです。
特に山に入る方は十分に注意しましょう。
熊と遭遇してしまった場合
熊は本来、臆病で大人しい動物です。
遭遇しないためにも、熊鈴などで
熊に自分の存在を知らせることが有効です。
食べ物の匂いなどが、一番危険です。
残飯や生ゴミなどの扱いに注意しましょう。
熊よけグッズ
山に入る時の必需品「熊鈴」
電子笛「電子ホイッスル」
もしもの1本「熊撃退スプレー」
伊豆と熊のまとめ
今回は、伊豆地域の熊について紹介しました。
「伊豆地域の熊は絶滅した」
ひっそりと生息していた熊だとしても…
富士山周辺から移動して来た熊だとしても…
その事実が覆ったことは、自然界にとって
素晴らしいことです。
しかし、エサ不足により人里に降りてくる熊は
人間にとっては脅威です。
捕獲や殺処分による論争…
そこには正解がありません。
事実として…
「命をかけて熊と対峙している方がいる」
ということ。
・人里に安易に降りて来れない柵の設置
・AI画像認識による熊よけ対策
最低限の共存マナーを保ちつつも…
最後は人命や家畜の保護に
努めねばなりません。
最後まで責任を持つことが人間に課せられた
役目なのかもしれません。
その最後の役目を果たすのは
我々一般人ではありません。
行政や猟師の方に感謝しましょう。
そして、熊のことをみんなで考えましょう。